ウニは「とろける甘み」と「舌に残る苦味」で、評価が真っ二つに分かれる鮨だねです。同じウニでも、種類と処理の仕方で味が大きく変わります。この記事では、ムラサキウニ・バフンウニ・アカウニの違い、苦味のもとになりやすいミョウバンという処理、そして軍艦巻きと直載せの使い分けを手がかりに、ウニともう一度出会い直すための知識をまとめました。
結論から
ムラサキウニは淡い黄色で上品な甘み、バフンウニは濃い橙色で濃厚な旨味。西日本で獲れるアカウニは山吹色の身で甘みが強く、獲れる量の少ない希少なウニです。「苦い」と感じる原因の多くは、形を保つために使われるミョウバンの処理によるものです。
この記事でわかること
- ムラサキウニ・バフンウニ・アカウニ、色と甘みの違い
- 「ウニは苦い」の正体になりやすいミョウバン処理と、塩水ウニとの違い
- 軍艦巻きが生まれた理由と、直載せで出す職人の狙い
- 6月から8月に最盛期を迎える北海道のウニと、昆布の海の関係
- 苦手意識のある方が、もう一度試すときの選び方
目次
ウニほど評価の割れる鮨だねは少ない
鮨だねの中で、ウニほど評価の割れるものは多くありません。とろけるような甘みに惹かれる方がいる一方で、「一度食べて苦手になった」という声もよく聞きます。実は、その分かれ方には理由があります。
ウニは種類、産地、そして獲れてからの処理によって、味わいが大きく変わる食材です。初めて口にした一貫がどんなウニだったかで、印象がほとんど決まってしまう。苦手の記憶を持つ方も、別の一貫と出会えば景色が変わることがあります。
ムラサキウニ、バフンウニ、アカウニ。三つの顔
鮨店でよく出会うのは、主にムラサキウニとバフンウニの二種です。ムラサキウニは身の色が淡い黄色で、粒は大きめ。すっきりとした上品な甘みが持ち味です。バフンウニは濃いオレンジ色の小さめの粒で、磯の香りとコクのある濃厚な甘みがあります。
もう一種、西日本で大切にされてきたのがアカウニです。日本だけに棲む種(学名 Pseudocentrotus depressus)で、北海道の松前や茨城県の日立から南、鹿児島県の大隅諸島までの浅い岩礁に暮らします。殻を割ると鮮やかな山吹色の身が五つ並び、甘みが強く、臭みやえぐみはほとんどありません。獲れる量が少なく、佐賀県唐津の玄海では海士が素潜りで一つずつ獲り、「幻のうに」とも呼ばれています。
| 種類 | 身の色と粒 | 味わいの傾向 |
|---|
| ムラサキウニ | 淡い黄色。粒は大きめ | すっきりと上品な甘み |
| バフンウニ | 濃いオレンジ。粒は小さめ | 濃厚でコクのある甘み |
| アカウニ | 鮮やかな山吹色 | 甘みが強く、臭みやえぐみが少ない |
どれが上というものではなく、好みと合わせ方の問題です。濃厚な味が得意でない方は、ムラサキウニの淡い甘みから入ると印象が変わりやすいようです。
バフンウニとは
バフンウニは、濃いオレンジ色の小さめの粒が特徴のウニです。磯の香りとコクのある濃厚な甘みがあり、淡い黄色で粒の大きいムラサキウニとは味わいの方向が違います。北海道のエゾバフンウニは、利尻や礼文、積丹といった昆布の豊かな海で育ちます。
「苦い」の正体、ミョウバンの話
「ウニは苦い」という記憶の多くは、ミョウバンという保存処理に由来すると言われます。ウニの身はとても崩れやすく、木箱に並べる板ウニには、多くの場合、型崩れを防ぐためにミョウバン水にくぐらせる処理が施されます。この処理が強いと、渋みや薬品めいた苦味として舌に残ることがあります。
一方、塩水ウニは海水に近い塩水に身を浮かべて運ぶもので、形は崩れやすいものの、獲れたてに近い甘みが残ります。近年は塩水ウニを選ぶ鮨店も増えてきました。
肝心なところ: 苦手の記憶は、ウニそのものではなく、保存処理の渋みに由来していることが少なくありません。
軍艦巻きと直載せ、それぞれの理由
ウニといえば、海苔で巻いた軍艦巻きを思い浮かべる方が多いはずです。軍艦巻きは昭和に生まれた比較的新しい形で、崩れやすいたねを舎利の上に留めるための工夫でした。海苔の香ばしさがウニの甘みを引き立てる、理にかなった仕立てです。
一方で、粒がしっかりしたウニなら、海苔を使わずに舎利へ直接載せる「直載せ」で出す職人もいます。海苔の香りを挟まないぶん、ウニと赤酢の舎利だけの一体感を味わえます。どちらで出すかは、その日の粒の状態を見た上での判断であることが多いようです。
ウニの旬は種類と産地でずれる
バフンウニの旬
北海道のエゾバフンウニやキタムラサキウニは、6月から8月にかけて最盛期を迎えます。利尻や礼文、積丹といった昆布の豊かな海で育った身は、この時期に特においしくなります。
アカウニの旬
西日本では、夏にアカウニの身が充実します。山口県の資料では、身(生殖巣)が最も大きくなるのは7〜9月、産卵期は10〜3月頃です。京都府の丹後では産卵前の7〜8月頃に身入りと味が最も良くなるとされ、佐賀県唐津の赤うにの旬は7〜9月です。
全国から旬の魚を選ぶおまかせの店では、夏の献立に北の海の便りが加わることも珍しくありません。東京・奥赤坂の鮨 淡師のように、九州を軸としながら全国の旬を追う店にとっても、夏は海の地図が北へ広がる季節です。
もう一度、ウニと出会い直すために
苦手意識のある方がもう一度試すなら、選び方を少し変えてみるのがおすすめです。「塩水ウニ」と表記のあるもの、産地の書かれたものを選ぶ。おまかせのカウンターなら、職人に「ウニが少し苦手で」と伝えてみるのもよい方法です。その日の粒を見て、淡いムラサキウニを直載せで、といった提案をしてくれることもあります。
気負わなくて大丈夫です。ウニは一粒ごとに海の育ちが映る、奥行きのあるたねです。苦手の記憶がほどけたとき、カウンターの楽しみはひとつ増えます。
よくあるご質問
ウニが苦く感じるのはなぜですか?
多くの場合、型崩れを防ぐためのミョウバン処理に由来します。処理が強いと渋みや苦味として舌に残ることがあります。塩水ウニや処理の浅いものでは、こうした苦味を感じにくい傾向があります。
ムラサキウニとバフンウニ、初めてならどちらがよいですか?
好みによりますが、濃厚な味が得意でない方は、すっきりと上品な甘みのムラサキウニから試す方が多いようです。磯の香りとコクを楽しみたいなら、バフンウニが向いています。
ウニの旬はいつですか?
種類と産地によってずれます。北海道のエゾバフンウニやキタムラサキウニは6月から8月が最盛期です。西日本のアカウニは夏に身が充実し、佐賀県唐津では7〜9月が旬とされています。産地が移り変わるため、時期ごとに違う海のウニを楽しめます。
ウニの軍艦巻きに醤油はつけますか?
おまかせのカウンターでは、煮きりや塩で味を調えてから出されることが多いので、まずはそのまま口に運んでみてください。軍艦巻きは傾けると崩れやすいため、手を加えずいただくのが食べやすい形です。
カウンターでのご予約は、トップページのご予約のご案内からどうぞ。
監修
髙田 達央
江戸前の伝統に学び、九州に根を持つ髙田 達央が、東京・奥赤坂の八席のおまかせカウンターに立ちます。The Tokyo Sushi Guide の監修者です。