鮨の玉子焼きで店の仕事がわかる理由|芝海老のカステラ玉子と締めの役割

監修|髙田 達央(奥赤坂 鮨 淡師 店主)

The Tokyo Sushi Guide の特集 更新 読了 約6分 お品書きを見る →

鮨屋の玉子には、出汁を巻き重ねる厚焼きと、芝海老のすり身を合わせて焼く「カステラ玉子」の二つの系統があります。魚と違って仕入れに頼れない分、仕込みの手間がそのまま表れる一品です。この記事では、江戸前の玉子の作り方と、店の仕事が見えると言われる理由、おまかせの締めに置かれる意味を順にたどります。

結論から

江戸前の玉子は、芝海老や白身魚のすり身に卵・砂糖・みりんを合わせ、弱火で長く焼き上げるカステラのような一品です。仕込みの手間がそのまま味に出るため、昔から玉子を食べれば店の仕事がわかると言われてきました。

この記事でわかること

  • 出汁を巻く厚焼きと、すり身入りの江戸前玉子の違い
  • 芝海老を叩いてあたり、弱火で焼き上げる江戸前の仕込み
  • 「玉子で店がわかる」と言われてきた理由
  • おまかせの締めに玉子が置かれる意味と、鞍掛けなどの出し方
  • 醤油をつけずに味わう、カウンターでの楽しみ方
目次

鮨屋の玉子は大きく二つの系統

鮨屋の玉子焼きは、作り方から大きく二つに分かれます。ひとつは卵に出汁を含ませ、薄く流しては巻き重ねる厚焼き。もうひとつは、魚介のすり身を卵に合わせて厚い一枚に焼き上げる、江戸前の古い型です。後者は断面のきめが細かく、その見た目から「カステラ玉子」とも呼ばれます。

比べどころ出汁を巻く厚焼きすり身入りの江戸前玉子
主な材料卵、出汁、砂糖、醤油など卵、芝海老や白身魚のすり身、砂糖、みりんなど
焼き方薄く流して巻き重ねる厚く流し、弱火で時間をかけて焼く
口あたりしっとりとして、出汁がにじむふんわりと軽く、菓子に近い甘み

芝海老のすり身を合わせる、江戸前の玉子

江戸前の玉子でよく使われるのが芝海老です。その名は、かつて江戸の芝浦あたりでよく獲れたことに由来すると言われます。殻をむいた身を包丁で叩き、すり鉢であたってなめらかにしてから、卵と砂糖、みりんを少しずつ合わせていきます。山芋をすり入れて、ふくらみを持たせる仕事もあります。

  1. 叩いてあたる芝海老の身を叩き、すり鉢で粒が残らなくなるまでのばす。
  2. 卵と合わせる卵、砂糖、みりんを加え、裏ごしして生地のきめを揃える。
  3. 弱火で焼く銅の玉子焼き鍋に厚く流し、焦がさないよう火を抑えてじっくり焼く。
  4. 返して仕上げる片面が固まったら返し、もう片面も色よく焼き上げる。一時間ほどかかることも珍しくありません。

海老の旨みと甘みが卵に溶け込み、口に含むと香ばしさのあとに海老の香りがほのかに残ります。芝海老のかわりに、白身魚のすり身を使う店もあります。

「玉子で店がわかる」と言われてきた理由

昔の鮨屋では、席について最初に玉子をつまみ、その店の腕をはかる客がいたと語られます。魚は仕入れの良し悪しに左右されます。一方で玉子は材料が身近な分、すり身のなめらかさ、甘みの加減、焼き色の均一さといった仕込みのていねいさが、そのまま表れます。

職人の世界でも、玉子焼きを任されることは修業のひとつの節目とされてきました。焼き場で火加減を手に覚えさせるまでには、長い時間がかかると言われます。

肝心なところ: 玉子は魚の仕入れではなく、店の仕込みの手間をそのまま映す一品です。

いまはおまかせが中心になり、最初に玉子を頼む光景は少なくなりました。それでも玉子を自家製で焼く店は多く、その店の考え方を知る手がかりであることに変わりはありません。

おまかせの締めに置かれる甘い一品

おまかせでは、玉子は終盤に出ることが多い一品です。握りがひと通り出て、巻物や椀のあとに、甘みのある玉子が一切れ。脂や酢の余韻をやわらげ、食事を穏やかに閉じる、甘味に近い役を担います。

出し方は店によってさまざまです。シャリを抱かせて海苔の帯を掛ける「鞍掛け」もあれば、シャリをつけずに厚い一切れだけを出すこともあります。つまみの途中に挟む店もあります。

鮨 淡師では、料理や日本酒から最後の一服までが重なり、「また帰ってきたい」と思える時間を目指すという考え方で仕事をしています。食事の締めくくりには茶室へ移り、抹茶と季節の和菓子をいただく流れです。鮨のあとに茶の甘みが続く、という結び方もあります。

カウンターでの玉子の味わい方

玉子はそれだけで味が決まっているので、醤油をつけずにそのまま口に運ぶ方が多いようです。握りであれば、手でつまんでも箸でも構いません。気負わなくて大丈夫です。

焼きたてを温かいまま出す店もあれば、前日に焼いて休ませ、味をなじませる店もあります。温かい玉子はふくらみと香りが立ち、休ませた玉子は甘みが落ち着いてきめが締まります。空気が冷えてくる十月ごろは、温かい玉子のやさしさがうれしい季節です。どちらの流儀か気になったら、職人に尋ねてみても。

よくあるご質問

鮨屋の玉子に芝海老が入っているのはなぜ?

海老の旨みと甘みを卵に移し、ふんわりとしたきめを出すためです。江戸前の伝統的な作り方で、芝海老のかわりに白身魚のすり身を使う店もあります。

おまかせで玉子はいつ出てくる?

握りがひと通り出たあとの終盤に、締めの一品として出ることが多いようです。つまみの途中に出す店もあり、順番は店の組み立てによって変わります。

鮨の玉子に醤油はつける?

玉子は砂糖やみりんで味が決まっているため、多くの場合は醤油をつけずにそのまま味わいます。もちろん好みでつけても差し支えありません。

「玉子で店の腕がわかる」は本当?

玉子には、すり身のなめらかさや焼き加減といった仕込みの手間がそのまま表れます。店を知る手がかりのひとつとして、ほかの鮨だねと一緒に楽しむくらいがちょうどよいでしょう。

ガイドから、カウンターへ

奥赤坂の八席のカウンターで、味わう。

江戸前の仕事に、ていねいな熟成を。一貫ずつ、その日の最良を握ります。海外のお客様には英語でご案内します。

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カウンターに立つ奥赤坂 鮨 淡師 店主 髙田 達央

監修

江戸前の伝統に学び、九州に根を持つ髙田 達央が、東京・奥赤坂の八席のおまかせカウンターに立ちます。The Tokyo Sushi Guide の監修者です。

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