おまかせとお好み、二つの注文の流儀。東京の鮨カウンターの歩き方

The Tokyo Sushi Guide の特集 監修|髙田 達央(奥赤坂 鮨 淡師 店主) 更新 読了 約6分

東京で鮨を食べるとき、注文の仕方は大きく二つに分かれます。職人に委ねるおまかせと、一貫ずつ自分で選ぶお好みです。いまはおまかせが主流ですが、それには理由があり、お好みにはお好みの楽しさがあります。この記事では、二つの流儀の背景と実際の違い、初めての席での頼み方を、七月の魚の例とともにご紹介します。

この記事でわかること

  • おまかせが主流になった背景にある、仕込みと熟成の事情
  • お好みならではの楽しさと、敷居が高く感じられる理由
  • 値段の見通しをはじめとする、二つの流儀の実際の違い
  • おまかせの締めくくりに一貫だけ追加する、現実的なお好みの入口
  • 鯵や新子など、七月のカウンターで名前の挙がりやすい魚
  • 予約時のひと言で当日慌てずにすむ、苦手な食材の伝え方
目次

二つの注文の流儀

おまかせは、その日の仕入れと仕込みをもとに、職人が順番まで含めて組み立てる注文の仕方です。お好みは、品書きやつけ場の魚を見ながら、食べたいものを一貫ずつ伝えていきます。どちらが正式ということはありません。かつての江戸前の店ではお好みが普通で、おまかせが広がったのは比較的近年のことです。

なぜ、おまかせが主流になったのか

いちばん大きな理由は、仕込みにあります。江戸前の仕事は、締める、漬ける、煮るといった手当てを魚ごとに施すもので、近年はそこに熟成が加わりました。魚種ごとに寝かせる期間や温度を見極める以上、どの魚をいつ出すかは、仕入れの段階からある程度決まっています。おまかせは、その日の仕込みの頂点を、いちばん良い順番で出すための形といえます。

席数の少ないカウンターが増えたことも背景にあります。たとえば奥赤坂の鮨 淡師のような八席の店では、同じ流れで供することで、握りたてを良い状態で出しやすくなります。

おまかせの楽しみ方

おまかせの席では、流れに身を委ねるのがいちばんの楽しみ方です。多くの店では、淡白な白身から始まり、味の濃いものへと進む組み立てになっています。カウンターで魚の名前や産地を尋ねる方も多く、会話は歓迎される傾向があります。気負わなくて大丈夫です。

肝心なところ: 苦手な食材やアレルギーは予約の際に伝えておくと、当日慌てずにすみ、職人も代わりの一貫を用意しやすくなります。

お好みの楽しさ

お好みの醍醐味は、食べたいものを、食べたい順に、食べたいだけ頼めることにあります。鯵が好きなら鯵から始めてもよく、同じ魚を二貫続けても構いません。「今日は何がいいですか」と尋ねれば、その日の仕入れから旬のものを挙げてくれることが多いようです。実は、おまかせの後に好きな握りを一、二貫追加するのも、立派なお好みのひとつです。慣れないうちは、この形から始める方が多いようです。

お好みが難しく感じられる理由

お好みの敷居の高さは、主に値段の見通しにあります。値札のない店では時価が中心で、総額が読みにくくなります。また、順番を自分で組み立てる必要があり、味の濃いものを先に食べると、後の淡白な魚の味が取りにくくなることもあります。間違いを恐れる必要はありませんが、こうした事情が、おまかせの分かりやすさを際立たせています。

おまかせお好み
注文の仕方職人に委ね、流れで供される一貫ずつ自分で選ぶ
値段の見通し総額が分かりやすい時価が中心で読みにくい
向いている場面初めての店、旬を広く知りたいとき好みが定まっているとき、通い慣れた店

七月のカウンターで、ひとこと添えるなら

七月は夏の魚が揃い始める時期です。梅雨明けの頃の鯵は脂がのり、イサキや穴子も名前の挙がることが多い季節です。月の後半には、小鰭の幼魚である新子の走りが話題にのぼることもあります。おまかせの途中でも、「今日の鯵はどこのものですか」といった一言から会話が生まれます。先の淡師のように、食後に茶室で抹茶と季節の和菓子をいただける店もあり、夏の一夜の記憶として残る時間になります。

初めてなら、どう選ぶか

初めての店なら、まずはおまかせを選ぶと安心です。その店の仕事と流れがひととおり分かり、値段の見通しも立ちます。普段から通う店ができたら、おまかせの後の追加や、お好みでの再訪を試してみても良いでしょう。二つの流儀は対立するものではなく、同じカウンターの二つの入口です。焦らず、少しずつ広げていくのがいちばんの近道です。

よくあるご質問

初めての鮨屋では、おまかせとお好みのどちらがいいですか?

初めての店ではおまかせを選ぶ方が多いようです。その日の旬を職人の組み立てで味わえ、総額の見通しも立ちやすいためです。慣れてきたら、締めくくりに好きな一貫を追加してみると、お好みの入口になります。

お好みで頼むと値段は高くなりますか?

一概には言えません。数貫で切り上げればおまかせより抑えられることもあり、良い魚を重ねれば上回ることもあります。値札のない店では時価が中心のため、気になる場合は注文の際に確かめても失礼にはあたらないとされています。

おまかせで苦手な魚が出てきたら、どうすればいいですか?

予約の際に苦手な食材を伝えておくのがいちばん確実です。当日でも、最初に一言添えれば代わりの魚に替えてくれる店が多いようです。無理に食べる必要はありません。

お好みは、どんな順番で頼めばいいですか?

決まりはありませんが、淡白な白身から始めて、味の濃いものへ進むと、それぞれの味が取りやすいと言われます。迷ったら「今日のおすすめから」と職人に委ねる頼み方もあります。

ガイドから、カウンターへ

奥赤坂の八席のカウンターで、味わう。

江戸前の仕事に、ていねいな熟成を。一貫ずつ、その日の最良を握ります。海外のお客様には英語でご案内します。

鮨 淡師で予約する The Tokyo Sushi Guide を見る
カウンターに立つ奥赤坂 鮨 淡師 店主 髙田 達央

監修

江戸前の伝統に学び、九州に根を持つ髙田 達央が、東京・奥赤坂の八席のおまかせカウンターに立ちます。The Tokyo Sushi Guide の監修者です。

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