日本酒のメニューに並ぶ「純米」「吟醸」「大吟醸」は、酒の優劣ではなく、原料と米の磨き具合を示す言葉です。この二つの軸が分かれば、知らない銘柄が並んでいても品書きはかなり読めるようになります。表示の読み方に加えて、温度帯の呼び名と、グラスか猪口かという器の選び方まで、鮨のカウンターで役立つ形でまとめました。
結論から
日本酒の品書きは「純米か」「吟醸か」の二点で読めます。純米は米と米麹と水だけで造った酒、吟醸は米を六割以下まで磨いた酒です。銘柄が分からなくても、香りの好み・味の重さ・温度の三つを伝えれば注文できます。
この記事でわかること
- 「純米」は醸造アルコールを加えない酒、「吟醸」は米を60%以下まで磨いた酒
- 精米歩合の数字は、削った量ではなく残した割合
- 十月に出回るひやおろしの特徴と、合わせやすい秋の魚
- 雪冷えから熱燗まで、温度帯の呼び名と目安
- 吟醸はグラス、燗酒は猪口が似合う理由
- 銘柄が読めなくても頼める、三つの伝え方
目次
純米と吟醸、二つの言葉で品書きの大半が読める
品書きの銘柄の横には、多くの場合「純米吟醸」「本醸造」といった区分が添えられています。これは特定名称酒と呼ばれる分類で、見るところは二点です。ひとつは醸造アルコールを加えているかどうか、もうひとつは米をどこまで磨いたか。「純米」とあれば米と米麹と水だけで造られ、「吟醸」「大吟醸」とあれば米をよく磨き、低い温度で時間をかけて発酵させた酒です。
| 表示 | 醸造アルコール | 精米歩合の目安 | 味わいの傾向 |
|---|
| 純米酒 | 加えない | 規定なし | 米の旨みとふくらみ |
| 本醸造酒 | 少量加える | 70%以下 | 軽快ですっきり |
| 純米吟醸酒 | 加えない | 60%以下 | 華やかな香りと米の厚み |
| 吟醸酒 | 少量加える | 60%以下 | 香りが立ち、軽やか |
| 純米大吟醸酒 | 加えない | 50%以下 | 繊細で香り高い |
| 大吟醸酒 | 少量加える | 50%以下 | 澄んだ香りと透明感 |
醸造アルコールは量を増やすためだけのものではなく、香りを引き立て、後味を軽くする目的でも使われます。純米でないから劣る、というわけではありません。
精米歩合の数字は「残した割合」
「精米歩合50%」は、玄米の半分を削り、半分を残したという意味です。数字が小さいほど米の外側を多く削っており、雑味のもとになりやすい成分が減って、香りの澄んだ酒になる傾向があります。
肝心なところ: 数字が小さいほど上等、とは限りません。米の旨みを残すために磨きを抑える蔵も少なくなく、その厚みが赤酢のシャリや漬けの醤油をしっかり受け止めることがあります。
十月の品書きに増える「ひやおろし」
秋の品書きでよく見かけるのがひやおろしです。冬から春に搾った酒を一度だけ火入れして夏の間寝かせ、二度目の火入れをせずに秋に出荷するもので、角の取れたまろやかな味わいが特徴です。戻り鰹や脂ののった鯖のように、味の濃い秋の魚と合わせやすい酒です。
ほかに「生酒」は火入れをしていない酒、「原酒」は加水していない酒を指し、原酒は度数が高めになりやすい傾向があります。「日本酒度」はプラスが大きいほど辛口寄り、マイナスほど甘口寄りの目安ですが、酸の量でも感じ方は変わるため、参考程度に見るくらいがちょうどよいようです。
温度帯には、五度刻みの呼び名がある
日本酒は、冷やしても温めても楽しめる珍しい酒です。温度ごとに呼び名があり、品書きや店の方との会話でもよく使われます。
| 呼び名 | 目安の温度 | 向きやすい酒 |
|---|
| 雪冷え | 5℃前後 | 生酒、すっきりした本醸造 |
| 花冷え | 10℃前後 | 吟醸、大吟醸 |
| 涼冷え | 15℃前後 | 純米吟醸、ひやおろし |
| 冷や(常温) | 20℃前後 | 純米、ひやおろし |
| ぬる燗 | 40℃前後 | 純米、本醸造 |
| 熱燗 | 50℃前後 | 本醸造、辛口の純米 |
紛らわしいのが「冷や」という言葉です。本来は燗をつけない常温の酒を指し、冷蔵した酒は「冷酒」と呼び分けます。華やかな吟醸は冷やしすぎると香りが閉じやすく、純米は燗にすると旨みがほどけることが多いようです。
グラスか猪口か、器で香りの届き方が変わる
香りを楽しむ吟醸や大吟醸は、口のすぼまったワイングラスで出すカウンターが増えています。香りが器の中にこもり、口に運ぶたびに立ちのぼるからです。一方、燗をつけた酒や米の旨みを味わう純米には、猪口やぐい呑みがよく似合います。厚手の陶器は口当たりをやわらかく、薄手の磁器はすっきりとした印象に寄せてくれます。
どちらで飲むか迷ったら、器ごとお店に任せてみても。器は銘柄に合わせて選ばれていることが多く、その組み合わせ自体がひとつの提案になっています。
銘柄が分からなくても、三つ伝えれば頼める
品書きの銘柄をすべて読み解く必要はありません。カウンターでは、好みを短く伝えて選んでもらう方が多いようです。
- 香りの好み「香りが華やかなもの」か「穏やかで米の味がするもの」かを伝えます。
- 味の重さ「すっきり軽め」か「しっかりした旨み」か、その日の気分で十分です。
- 温度と量「冷たいもの」「燗で」、あるいは「少しずつ数種類」と添えると、鮨の流れに合わせてもらいやすくなります。
鮨 淡師では、日本酒を脇役ではなく鮨を完成させる存在と捉え、新政や十四代、飛露喜を含めて全国の蔵から選んだ酒を、一貫ごとの味わいに合わせて提案しています。白身から光り物、煮物へと移るにつれて酒を替えていくのも、おまかせならではの楽しみです。分からない言葉があれば、その場で気軽に尋ねてみてください。
よくあるご質問
純米と吟醸、鮨に合うのはどっち?
どちらが上ということはありません。白身や貝のような繊細な鮨には香りの穏やかな吟醸、漬けや煮穴子のような味の濃い鮨には旨みのある純米が合わせやすい傾向があります。
「冷や」と頼むと冷たいお酒が出てきますか?
本来の「冷や」は常温の酒を指します。冷蔵した酒が飲みたいときは「冷酒で」と伝えると間違いがありません。店によっては冷酒の意味で使うこともあるため、温度を言葉で添えると確実です。
鮨に熱燗は合いますか?
合わせる方は多くいます。燗にした酒は脂ののった魚や酢の効いた光り物と相性がよく、秋から冬にかけてはとくに好まれます。熱すぎると香りが飛びやすいため、ぬる燗から試してみるのもよい方法です。
日本酒に詳しくなくてもペアリングを頼んでいいですか?
もちろんです。ペアリングは、詳しくない方こそ楽しみやすい頼み方です。苦手な香りや飲める量を最初に伝えておくと、それに合わせて組み立ててもらえます。
監修
髙田 達央
江戸前の伝統に学び、九州に根を持つ髙田 達央が、東京・奥赤坂の八席のおまかせカウンターに立ちます。The Tokyo Sushi Guide の監修者です。