日本酒だけじゃない鮨のペアリング。シャンパーニュ・ビール・お茶の合わせ方

The Tokyo Sushi Guide の特集 監修|髙田 達央(奥赤坂 鮨 淡師 店主) 更新 読了 約6分

鮨のペアリングは、日本酒一択ではなくなりました。東京のおまかせのカウンターでは、シャンパーニュ、ビール、そして冷たく淹れた煎茶が、一貫ごとの味わいに寄り添う選択肢として並びます。ここでは、それぞれがどのねたと響き合い、どこでつまずきやすいのかを、温度と頼み方まで含めて整理します。

結論から

鮨に合わせられるのは日本酒だけではありません。白身や貝には辛口のシャンパーニュ、脂ののったねたや暑い日の一杯目にはビール、うまみで受けたいときは低い温度で淹れた煎茶。泡・苦味・渋みのどれで口を整えるかで選ぶと、外しにくくなります。

この記事でわかること

  • 白身と貝に辛口のシャンパーニュが合う理由と、避けたい甘口と樽の香り
  • 赤ワインで生臭さが立ちやすい場面と、漬けや煮穴子という橋渡し
  • 八月の一杯目にビールが効く理由と、握りに移る前に切り上げる組み立て
  • 低温で淹れた煎茶・玉露・ほうじ茶の使い分け、締めのあがりとの違い
  • 飲みものを替える位置。つまみから握りへ、淡い白身から脂へ
  • カウンターでの伝え方。銘柄を指名せずに味の向きを渡す
目次

日本酒だけではなくなった理由

鮨と日本酒の相性が長く語られてきたのは、どちらも米から生まれ、うまみと酸の質が近いからです。近年のおまかせは、つまみから握りまで十数貫から二十貫ほどを二時間近くかけて進みます。淡い白身から光もの、赤身、煮ものへと味の重心が動いていく流れに、一種類の飲みものだけで並走するのは案外難しい。そこで泡や苦味、渋みの力を借りて、途中で飲みものを替える組み立てが増えました。

肝心なところ: 飲みものを替えるのは味を足すためではなく、次の一貫を一貫目のように迎えるためです。

白身と貝に、辛口のシャンパーニュ

泡の刺激は、口に残ったシャリの甘みと魚の脂をいったん洗い流します。瓶内二次発酵に由来する酵母の香りも、赤酢のシャリが持つ熟れた香りと近い方向にあり、ぶつかりにくい。鱚や真鯛のような淡い白身、鮑や赤貝のような貝に合わせると、素材の塩味と泡の酸が同じ高さで並びます。

気をつけたいのは甘みと樽です。甘口寄りのものや樽の香りが立つものは、酢と塩で締めたシャリを重く感じさせることがあります。温度は八度から十度あたり。冷やしすぎると香りが閉じ、泡の刺激だけが残ります。

ワインは白から。赤は橋渡しを探す

白は樽を効かせていないものが合わせやすく、シャブリや甲州、辛口のリースリングがよく挙がります。昆布締めにした白身のように、うまみを移した仕事とは特に響き合います。赤は、鉄分の多いものほど魚の脂と反応して生臭さが立ちやすいと言われ、避ける方もいます。合わせるなら軽やかな赤を十四度前後まで落として、漬けや煮穴子のように醤油や煮つめの乗ったねたに。橋渡しになるのは魚そのものではなく、江戸前の仕事の側です。

ビールが効くのは、始まりの一杯

八月の東京では、店に着いた時点でまだ汗が引いていないことがあります。炭酸と穏やかな苦味は、暑さで鈍った舌を戻し、最初のつまみを受け止めやすくします。香りの強い地のビールより、苦味の輪郭が静かなものの方がねたを邪魔しません。冷たさは口の中の温度を下げるので、人肌に近いシャリの輪郭がぼやけることもあります。握りに入る頃には飲み切って、次の一杯へ移る組み立てが多いようです。

お茶のペアリングという静かな流れ

酒を飲まない方に向けて、茶を一貫ごとに替えて出す店が少しずつ増えています。鍵は温度です。低い温度で時間をかけて淹れた煎茶は渋みが出にくく、うまみと甘みが前に出るため、熟成させた白身や貝のうまみと重なります。玉露はさらにうまみが濃く、雲丹や中とろのような密度のあるねたにも負けません。ほうじ茶の香ばしさは、煮穴子や玉子のように終盤の甘みのある一皿に寄り添います。

食後に出るあがりの粉茶は、熱く濃く淹れて口を洗うためのものです。ペアリングの茶は目的が違い、一貫ごとに温度と濃さを変えて味を受けます。鮨 淡師では食事の締めくくりに本格的な茶室で抹茶と季節の和菓子をいただけるように、茶は鮨の余韻を引き受ける飲みものでもあります。

何を、どこに置くか

飲みもの寄り添いやすいねた気をつけたいこと
辛口のシャンパーニュ鱚や真鯛などの白身、鮑、赤貝甘口と強い樽の香りは避ける
樽を使わない白ワイン昆布締め、烏賊、太刀魚冷やしすぎると香りが閉じる
軽い赤ワイン漬け、煮穴子鉄分の強いものは生臭さが立つことも
ビール前半のつまみ、揚げもの握りに入る前に切り上げる
低温で淹れた煎茶・玉露熟成した白身、雲丹濃く淹れると渋みが前に出る
  1. つまみのあいだビールか泡で口を整え、暑さを抜く。
  2. 握りの前半白身と貝に、辛口の泡か樽のない白を。
  3. 赤身から煮ものへうまみの厚い日本酒、または軽い赤に移る。
  4. 締めの一服あがり、あるいは抹茶で余韻を置く。

カウンターでは、銘柄を指名するより「白身が続くあいだは軽いものを」「そろそろ赤身に移るので」と味の向きを伝える方が通じやすいようです。淡師では店主が全国の蔵を訪ね、造り手の考えや土地の個性を知ったうえで銘柄を選び、一貫ごとの味わいに寄り添う提案もしています。詳しくない、と先に伝えてしまって構いません。気負わなくて大丈夫です。

よくあるご質問

鮨屋にワインを持ち込んでもいいですか

可否は店によって分かれます。受けている店でも抜栓料がかかることがあり、酒の品揃えを整えている店では断られる場合もあります。予約のときに一言尋ねておくのが確実です。

カウンターでビールを頼むのは失礼ですか

失礼にはあたりません。つまみのあいだに飲む一杯として、ごく普通に選ばれています。握りに移る頃には飲み切って、次の飲みものに替える方が多いようです。

お酒を飲まないのですが、お茶のペアリングは頼めますか

用意している店とそうでない店があります。予約時に飲まない旨を伝えておくと、低温で淹れた煎茶や炭酸水、果実の飲みものなどを組んでくれることがあります。当日に慌てずに済みます。

シャンパーニュはどんなものを選べばいいですか

辛口で、樽の香りが強く出ていないものが合わせやすいとされます。甘みが残るものはシャリの酸と重なって重く感じられることがあります。温度は八度から十度あたりが目安です。

日本酒とワイン、どちらを先に飲むべきですか

順番の決まりはありませんが、泡や軽いものから始めて、うまみの厚いものへ移る流れが組みやすいようです。ねたが白身から赤身、煮ものへと重くなる動きに合わせると自然です。

ガイドから、カウンターへ

奥赤坂の八席のカウンターで、味わう。

江戸前の仕事に、ていねいな熟成を。一貫ずつ、その日の最良を握ります。海外のお客様には英語でご案内します。

鮨 淡師で予約する The Tokyo Sushi Guide を見る
カウンターに立つ奥赤坂 鮨 淡師 店主 髙田 達央

監修

江戸前の伝統に学び、九州に根を持つ髙田 達央が、東京・奥赤坂の八席のおまかせカウンターに立ちます。The Tokyo Sushi Guide の監修者です。

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