店主が豊洲で津本式を学び始めました。仕立てを自分の手で確かめるために

The Tokyo Sushi Guide の特集 監修|髙田 達央(奥赤坂 鮨 淡師 店主) 更新 読了 約6分

津本式は、ホースの水圧を使って魚の血を抜く手当ての技術です。2026年8月8日、東京・奥赤坂で八席のカウンターに立つ店主が、豊洲市場でその講習を受け始めました。この記事では、津本式が魚に何をしているのか、産地の仕立て師に任せる道があるなかで職人自身が習う意味はどこにあるのかを、江戸前の一般的な考え方とあわせて整理します。

結論から

鮨 淡師の店主は2026年8月8日から、豊洲市場で津本式(究極の血抜き)の講習を受け始めています。認定を取得したという話ではなく、仕立ての技術を自分の手で扱えるようにするための、現在進行形の学びです。

この記事でわかること

  • 津本式の三つの工程(締め・神経抜き・血抜き)が、魚に何をしているのか
  • 「究極の血抜き」がホースの水圧を使う理由
  • 産地の仕立て師に委ねる分業と、職人自身が手当てを覚えることの違い
  • 血抜きと熟成のつながり。寝かせる日数を一律に決められない背景
  • 八月の魚で、届くまでの扱いの差が表れやすい理由
目次

2026年8月8日、豊洲での講習が始まった

2026年8月8日、東京・奥赤坂で八席のカウンターに立つ店主が、豊洲市場で津本式の講習を受け始めました。認定を得たという知らせではありません。魚の手当てを産地や仕入れ先に委ねるだけでなく、自分の手でも扱えるようにするための学びが、いま続いている段階です。

鮨の世界では、締めや血抜きを担うのは多くの場合、産地の仕立て師や仲卸です。届いた魚をどう寝かせ、どこで握るかが職人の領分になります。その線を一歩越えて、店に届く前の工程を体で覚え直す。今回始まったのは、そういう学びです。

津本式は魚に何をしているのか

津本式は、魚が死んだあとに身へ残る血と水分を、順序立てて扱う手当ての技術です。とくに知られているのが「究極の血抜き」と呼ばれる工程で、ホースの水圧を利用して動脈に水を送り、細い血管に残った血を押し出します。血は時間とともに身の匂いや色に影響するため、最初の数十分の扱いが、その後の数日を左右すると考えられています。

  1. 締める活きた魚の脳を締め、暴れによる身の傷みを抑えます。
  2. 神経を抜く脊髄に細い針金を通し、死後硬直が進む速さをゆるめます。
  3. 血を抜くホースの水圧で動脈に水を送り、身に残る血を押し出します。
  4. 仕立てて寝かせる余分な水分を抜き、低い温度で落ち着かせる状態を整えます。
肝心なところ: 津本式は魚を長持ちさせる魔法ではなく、血と水分を扱うための手順です。その先をどう寝かせるかは、魚ごとの判断に委ねられます。

仕立て師がいるのに、職人が習う理由

手当てを専門にする仕立て師の仕事は、鮨の味を大きく左右します。ならば任せればよいのではないか、という疑問は自然です。それでも職人が自分で手を動かす理由は、届いた魚の状態を読む精度が変わるからです。血の残り方、身の締まり方、切ったときの水の出方。同じ工程を自分で経験していると、目の前の一尾がどう扱われてきたかを、より細かく推し量れるようになります。

鮨は、漁師が獲り、仲卸が目利きし、仕立て師が仕立てた魚の、最後の受け手です。その手前の仕事を知ることは、受け取り方を精密にすることでもあります。

学ぶ場所が市場であること

豊洲は、競りと仲卸が日々動いている現場です。同じ魚種でも、産地も大きさも、締めてからの時間も日ごとに違います。講習をそこで受けるということは、条件のそろった教材ではなく、実際に流通している魚で反復するということです。思うようにいかなかった日の理由も、その場で確かめられます。

血抜きは目的ではなく、熟成の入り口

血抜きや仕立ては、それ自体がゴールではありません。鮨 淡師では、その魚に合った熟成を施し、一番おいしい瞬間を見極めて供するという考え方で仕事をしています。手当ては、その見極めの幅を広げるための土台です。その姿勢は店の考え方にも通じています。

熟成に向く期間や温度は魚種によって違い、同じ魚でも季節や個体で変わります。だから日数の目安を一律に決めることは難しい。手当てが整っているほど、判断できる範囲は広がります。

八月の魚で、扱いの差が表れやすい理由

八月のカウンターには、新子や太刀魚、鱸といった魚が並びます。夏は水温も気温も高く、締めてからの時間が味に効きやすい季節です。とくに新子のように小さく、数日で姿の変わる魚は、届くまでの扱いがそのまま仕事の前提になります。

普段は意識しないところですが、口に入る一貫の背後には、獲られてから握られるまでの数日があります。今回の学びは、その数日を短くする話ではなく、精度を上げる話です。

よくあるご質問

津本式で締めた魚は、普段の魚と何が違うのですか?

身に残る血と水分の量が変わります。血が抜けているほど、寝かせたときに匂いが立ちにくく、身の色も落ち着きやすいと言われます。ただし手当ての良し悪しだけで味が決まるわけではなく、魚そのものの状態と、そのあとの寝かせ方が重なって仕上がります。

津本式の認定を受けたお店ということですか?

いいえ。2026年8月から講習を受け始めた段階で、学びの途中です。認定を得たという話ではありません。仕入れ先の仕立て師に委ねるだけでなく、店主自身が手当ての技術を身につけつつある、という事実です。

熟成させた鮨だねは、何日くらい寝かせるものですか?

魚種や大きさ、季節や個体によって変わるため、一律の日数はありません。数時間で頃合いを迎えるものもあれば、一週間以上かけて味が乗るものもあります。江戸前のカウンターでは、日数そのものより、その日の状態を見て出す時期を決める考え方が取られる傾向があります。

カウンターで血抜きや熟成のことを聞いてもいいですか?

気負わなくて大丈夫です。手が空いたときに「これは何日ほど寝かせているのですか」と一言尋ねる方が多いようです。作業に集中している場面ではひと呼吸おいて、間が空いたときに聞いてみても遅くありません。

ガイドから、カウンターへ

奥赤坂の八席のカウンターで、味わう。

江戸前の仕事に、ていねいな熟成を。一貫ずつ、その日の最良を握ります。海外のお客様には英語でご案内します。

鮨 淡師で予約する The Tokyo Sushi Guide を見る
カウンターに立つ奥赤坂 鮨 淡師 店主 髙田 達央

監修

江戸前の伝統に学び、九州に根を持つ髙田 達央が、東京・奥赤坂の八席のおまかせカウンターに立ちます。The Tokyo Sushi Guide の監修者です。

目次